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航海タイム

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第六章 憂いの風を抜けて(前編)

1

「そろそろ他に行きたいってのに、これと言って目的が無いね」
 冒険者ギルドの椅子に腰掛けている青年は、そんなことを呟いた。
 青を基調としたベルベット製のチュニックを羽織り、髪の毛はこの辺りにはない特殊な染色量で緑に染め上げられている。
 一見してまるで芸術家のような風貌をしているが、彼は紛れもない冒 険家であった。
 名前をフェレットと言う。
 同じテーブルについている細い目をした大男、かおる。
 深緑のローブを身に纏った落ち着いた印象を受ける女性、アイ。
 彼らは三人とも生粋の船乗りであり、年の半分以上を海上で過ごす事を常としていた。
 不思議なものでどんなに居心地が良い町にいても、気付くと海を恋しく感じている自分がいるのだ。
 船乗りとしての逃れられぬ性なのだろうし、それを苦痛に感じる事はない。
 リスボンに滞在して早二ヶ月が経ち、彼らは今、疼く船乗りの血をどうにか抑え込んでいた。
「しかしここ最近、とんと良い依頼が入ってこないわね」
 溜息混じりにそう言ったのはアイだ。
 彼らがこの町から出ることの出来ない理由はずばり、それなのであった。
 どうせ当ての無い旅だ。
 今までは言うなれば風任せ、具体的には冒険者ギルドの依頼任せに旅をしていた。
 依頼仲介人に西で事件が起きたと言われれば西へと赴き、 東へ向かう新たな航路を開拓して欲しいと言われれば、船団は東に航路を取る。
 つまりは大掛かりな依頼が持ち込まれれば、彼らに取ってはそれが旅に出る理由となるのだ。
「もうちょっとこうさ、フェニックス探索の依頼とかあれば良いのにね」
「フェレさん、それいつかも言ったわよ」
 アイに指摘され、フェレットはほんの少し不満げな表情を浮かべた。
「だってなー。冒険者ギルドだけならともかく、海事のギルドも同様にろくな依頼が無いみたいだし。こりゃリスボンも終わったな」
 町単位でくそみそにけなすフェレットを場にいた数人が睨み付けたが、彼はそれを気にする様子はない。
「ヴァイキングや私掠船とかが、一斉にリスボンに攻めこんで来てくれれば良いのに。きっと数十万単位の報酬がもらえる依頼になる」
 フェレットにつられた訳ではないだろうが、続くかおるの言葉もまた物騒なものだ。
 彼は彼で、ここ数日の暇さ加減に不満を感じているらしいし、おまけに元々、歯に衣を着せることなど知らない性質である。
 船員の大半は酒を飲むことで暇を潰していたが、アルコールに弱い彼はそうすることも出来ず。
 手持ち無沙汰な時間を最も多く過ごしていたのは、おそらく彼だったのだろう。
「ヴァイキングか。そう言やここ半年程、まともな海戦もしてないですもんね」
「そうやねえ。昔は北海のバイキン相手にブイブイ言わせてたもんだが、おじさんもこう静かだと年を感じちゃうよ」
「それってヴァイキングと黴菌をかけてるんですよね。そりゃ良いや、ここ数日の日々の中で一番面白かった」
「わっはっはっは」
(笑えないわ……)
 二人の乾いた笑いを、アイはそれ以上に乾いた笑顔で見守った。
 わざわざ冒険者ギルドを訪れている割には、一向に依頼を受けようとしないフェレット達一行。
 しかし、幸か不幸かそんな彼らに興味を持つ人間はいるものであった。
 似た者同士、一箇所に集まる習性があると言うか。
 結局だべるだけだべってギルドを後にしようとするフェレット達。
 入り口の扉を開こうとしたところで、いきなり後ろから肩を叩かれた。
「あのぉ……すんませんっす」
「うわっびっくりした」
 少々わざとらしい声をあげ、フェレットが振り返ると。
「さっきの話聞かせてもらったっす」
「はっ? さっきの話?」
 独特な口調で喋る一人の少年が、そこに立っていた。
 身長はフェレットとそう変わりないが、年齢は彼よりもおそらく四、五つは若い。
 まだ十代の半ばに差し掛かった辺りだろうか。
 この少年は誰かの知り合いなのかと、フェレット達は互いの顔を見合わせた。
 しかし心当たりは誰にも無い様子だ。
「あの……さっきの話って、どのことを言ってるのかしら? 私達、あまり人様に聞かせられるようなことは話してなかったけど」
 アイが先んじてそう口にした。
 そりゃないよ、とフェレット達は顔を渋くしている。
「えーと……ほら、ヴァイキングをボコボコにした、とか言ってた辺りっす」
「ああ……そう言やしてたね、そんな話」
 かおるは耳の穴に指を突っ込みながら返した。
 あんまりどうでも良い、と言った感じで。
「あれ、本当なんっすか?」
 かおるのそれに百倍する程、興味津々な様子で少年は訊ねた。
 立ったまま顔を乗り出して、前屈みになってかおるを見ている。
「本当だっけ、フェレッチ君」
「……なんで僕に振るんですか」
 フェレットは言ったが、返事が無かったので彼はうーむと考えを巡らせ始めた。
「本当も本当、北海のヴァイキングは今までにのべ千人はのめしたね。今じゃ向こうは僕等を恐れてしまって、僕等の船が通るだけで停戦協定書を差し出してくる位さ」
 フェレットは一瞬にして、アイの顔が呆れたものになるほどの嘘を並べ立てた。
 ふふふ、と得意げに笑んでいる彼の首根っこを、アイが引っこ抜いて奥へと連れて行く。
「ちょっと、幾らなんでもビッグマウスが過ぎるんじゃない? あんな純真そうな青年を騙したりして……」
「かおるさんが僕に振るから悪いんだよ。ま、でもあの人なら実際にそれくらいやれそうだし……」
「そうだけど、でもねぇ」
 かおると少年には聞こえない位置で何やら囁き合う二人であった。
 やれやれ、とかおるは肩を竦めている。
「本当なんっすか? 今の話は」
 少年に顔を覗き込まれて、かおるは思わず後ろへと仰け反った。
「あー、うん。じゃあまあ、そう言うことで」
 ふとした弾みで、ひどく曖昧な返事をする。
 その瞬間、少年はいきなり空に飛びあがった。
「そりゃすごいっす! ヴァイキングは自分でさえ一筋縄じゃいかない相手なのに! わざわざリスボンまで来たかいが有ったっす!」
 ドタンバタンと足音を響かせながら建物内を跳ね回る少年を、皆はぽかんとして見つめた。
「何だ何だ……?」
 フェレットとアイも驚いて、またこちらの方へと戻ってきた。
「いや、実は自分、北海からここまで腕の立つヒトを探しに来たもんで……。あ、これはここだけの話なんっすけど」
 ここだけと言うか、確かにこの建物内の全員にその声は聞こえていた。
「ほう、そりゃ面白そうだ」
 ずっと無愛想に話を聞いていたかおるも、ようやく目を輝かせ始めた。
 じっくり話を聞かせてもらう前に、
「そう言や名前は何て?」
まず、最低限のコミュニケーションを取る事から始める。
「パングっす」
 少年はそう名乗り、
(パンツか。只者ではないな。名前からして)
かおるはそう理解した。
 彼が半笑いになっているその理由に、パングは気付く事が出来ず。
 数時間後、リスボンの町を出る頃になってようやく誤解は解けることになる。

2

 リスボンで過ごした時は確かに平穏だったが、皆が皆、何も出来事が無かったわけではなかった。
 人と人との関係は、少しずつだけれど絶えず変わり続けている。
 数ヶ月前にフェレット達に偶然助けられた少女、リィ。
 彼女もまた、何時しかすっかり仲間の船乗り達と打ち解けていた。
「ねぇ、リィ。本当に来て良かったでしょ、綺麗な景色でしょ。ここ」
「うん……」
 フェレットが船長を務めるキャラック船”フォスベリー”の船員に連れられて、リィは”リスボンで一番高い場所”へと来ていた。
「俺が子供の頃から来てた場所なんだよ。変わってないな……来て良かったなぁ」
 彼女をここに連れてきた船員の名は、コロ。
 船団の中で最年少の船乗りで、元々ここリスボンの出身者である。
「うん、綺麗な景色だね」
 確かに、そこから見える海はまた格別の美しさであった。
 広大に広がる海はとにかく壮観で、船上から眺めるのとはまた違った趣がある。
「リィ、何か言ってよ」
 景色に見惚れているリィに、コロは唇を尖らせて言った。
「ごめんね。あんまり景色が美しかったから、つい」
「その綺麗な景色まで案内した、俺のこともちょっとは誉めてくれないと」
「うん……ありがとうね、コロ君。わざわざここまで連れて来てくれて」
「まだ他人行儀だなあ、なんか」
「そうかなぁ……?」
 海へと沈んでいく夕陽を、二人は僅かの会話を交わしながら見守った。
「フェレさん達、今日はちゃんと依頼を見つけられたかなぁ…。そしたら、今度はまた別の町に行くんだよね」
「そうだな。東から来たから次は北に行くのかな、それとも西か南か」
「フェレさんが言ってたわ。何処に航路を取っても、行く土地にはそれぞれの魅力があるから、楽しい旅になることは保証するって。楽しみだな」
「ふぅん」
 コロの表情に僅かに陰が落ちる。 その理由を、リィが気付く事はない。
「コロ君は、リスボンに家族がいるんでしょ? 旅に出たらまた離れ離れになっちゃうけど、寂しくない?」
「子供扱いしないでよ」
「そんなつもりで言ったんじゃないわ。貴方だけじゃなくて、他のみんなも……寂しくならないのかなって前々から思ってたの。あんなに広い海に出ちゃったら、家族に会うことなんて殆ど出来なくなっちゃうし」
「それでも航海がしたいから、しょうがないじゃん。それに家族がいなくたって、恋人は作れるし」
「恋人って……出会いなんか無さそうじゃないかしら?」
「恋人は無理じゃないよ。船員内でくっつくとかさ、よく聞く話だよ」
「そ、そうなんだ」
 まずい方向に話を進めてしまった、とリィは悔やんだ。
「でもうちは、女の人の船員はアイさんくらいだものね。アイさんは魅力的な方だけど……」
「リィがいるじゃん」
「私? 私は……」
 なんとかはぐらかそうとして、リィは益々墓穴を掘ってしまう。
「私あんまり、そう言う話には興味無いし……」
 てへへと笑ってみせたが、それはコロからすればあからさまに胡散臭かったようであった。
「興味ないって? でもリィは、普段の様子を見てると……」
「もう、いいじゃない」
 放っておいては何を言われるかわからないと、続く言葉を遮った。
「私はね、まず記憶を探すことが先決なの。……だから今はそう言うことは、あんまり考えちゃいけない時間だって思ってる」
「そんな事無いよ」
「ね、そろそろ帰ろう。夜になっちゃうわ」
 座って景色を見ていたリィだったが、ばっと立ちあがって、即座に踵を返した。
 彼女のその華奢な体に似合わぬ俊敏な動作で。
「待ってよ、急に」
 ゆったりとした坂を下って行くリィに、コロも慌てて続いた。
 下り坂は大分長い距離があり、下り終えたその場所には一行が泊まっている宿がある。
 急ぎ足で坂を下って行く。
 海から吹きつけるゆったりとした風が、背中を後押ししてくれる。
 宿の目前まで来たところで、二人は一つの人影を発見した。
「あ……フェレさん」
 そこにいたのは”フォスベリー”の船長。
「お帰り、二人共」
「わざわざ待っててくれたんですか?」
「ああ、まあね」
 何気なく言うフェレットの表情を目にして、リィの顔には自然と微笑が浮かんだ。
「と言うのは、ちょっと皆に話す事が出来てね。今後の航路のことなんだけど」
「良い依頼が見つかったんですね!」
「そんな所だ。で、これから酒場で会議をすることになった。二人の船長はもう先に行ってるよ」
「会議って、酒場で……?」
「議論を交わすより前に、酒を酌み交わしたりしてるはずさ。今頃」
「成る程、想像つきます」
 こくりと頷き、リィは笑った。
「僕もすぐ酒場に行くけど、二人はどうする? まあ実際は話し合いなんて数分で、また飲み明かす事になるだろうけど」
 そう聞いてリィは一瞬顔を歪めたが、
「もうじきリスボンを出るんですよね? なら、今日くらいは良いかな……」
と、フェレットに付いて酒場に行く意思表示をした。
「コロはどうする?」
「俺はよしときます」
 コロはそう一言だけ返事をすると、間をすり抜けてすたすたと宿のほうに行ってしまった。
 その声にほんの少し棘が混じっていたように感じて、フェレットはきょとんとして考え込む。
「僕、なんか怒らせることしたかな?」
「ううん」
 リィは首に横に振った。
「出かけてたから、疲れてるんですよきっと。私達は酒場に行きましょう」
「ああ、そうだな」
 コロの事を気にしつつも、二人は歩き出した。
「で……どうだったんだい? 景色は綺麗だった?」
 リィとコロが出かけていたことは、フェレットやアイ達にも知れている。
「綺麗でしたよ」
「で、進展はあった?」
「進展って、何のです?」
「男女関係のさ」
「フェレさんっ!」
 いきなりリィは声を上げた。
 意識したわけでもなく、自然と大きな声になってしまった。
「あのですね……そんなんじゃないって、何度も言ってるでしょう。もう、フェレさんだけじゃなくて、かおるさん達にも言われるんですから……」
「だってね。少なくとも、向こうは完全に気があるよ。あれは」
 フェレットは笑いながら言った。
 彼女がむきになっている様が、おかしかったようだ。
「コロ君は弟みたいな感じなんですよ。恋愛とは全く別の話なんです」
「ふぅん」
「ふぅんって何ですか!」
「あ……いや、違う。そんなつもりで言ったんじゃない」
 誤解を受けたと思い、フェレットは即座に訂正をした。
「君は記憶を失くしてるだろ? なのに『弟みたい』って感触がわかるもんなのか、って思ったのさ」
「え」
 言われて、リィは確かに、と思った。
 思わず口をついて出たその言葉に、自分自身でも疑問を抱いた。
「そうですよね。……変ですね、なんだか……」
「記憶は途切れてても、一般常識は残ってたりするものなのかね。難しいな」
「ええ……」
 思い直してみれば単に、咄嗟に言い訳をしただけなのかもしれない。
「まあ、コロはまだ若いし……ほら、性欲に満ちた年頃って言うか。以前某シャルトリューズの船長にもちょっかいかけて、散々な目にあったことがあるんだ。リィもそこら辺を適度に理解して付き合ってくれよ」
「は、はあ」
 けれど訂正も出来ずに、話題は流れていくのだった。

3

 冒険者ギルドでの出会いから一日が経って。
「この町ともしばしのお別れね。ま、でもまた訪れるのはきっとそう遠い日じゃないでしょう」
 アイがそう口にすると、皆はそれぞれに思いを込めて頷きを返すのだった。
「そうやね。愛しのカルスティナもいることだし」
 かおるの声にはあまり思いがこもってはいない。
「誰……って、酒場のお嬢さん達のことかしら。二人の名前が混じってるわよ、それ」
 出航を前にして、一行は最後にもう一度、町並みを眺めていた。
「何にせよ、久々の帰還ってことになるわねぇ」
「帰還?」
 アイの言葉に、リィが疑問を投げかけた。
「帰還よ。私やかおるさんはあの辺りの出身だもの」
「そうなんですか? スペイン語もポルトガル語も流暢に話すから……てっきり、この辺りの方なのかと思ってました」
「その理屈で言ったら、リィちゃんもこの辺りの出身ってことになるわね」
「いや、それがそうでもないんだよ。アイさん」
「ん?」
 二人の会話に口を挟んだのはフェレットだ。
「北に向かうにあたって、色々な言語を覚えとく必要があるって話をしたのさ。僕が知ってる言語を、基礎の部分だけでも教えとこうと思ってね。そしたらさ」
 じと目で見られて、リィは顔を俯かせた。
 フェレットは何でか悔しそうな様子だ。
「話せるんだよな。フランス語も、英語もオランダ語もね。イタリア語もか……それにギリシャ語とアラビア語も」
「そうなの!」
「僕が知ってる言葉は全部話せたよ。それも基礎だけじゃなくね。相当なもんだよ」
 フェレットとアイの会話を、リィは少しの間無言で聞いていた。
「喜ばしいことだけど、益々身元が特定出来なくなったな……」
 そんなフェレットの心配を、アイはさして気にする様子もなく。
「ねえねえ、リィちゃん!」
「はい?」
「私の知ってる各言語も、もしかしたら話せるんじゃないかしら?」
 興味津々になってそう訊ねた。
「その……幾つかの言葉は、頭の中にあるんです。でも、それぞれが何処の国で使われてるのかわからなくて……」
「それじゃ、私が一つずつ口にしてみるから、知ってたら同じ言葉で返してみてね」
 そう言うと、アイは各国の言語を口にし始めるのだった。
 ノルド語で、西アフリカ諸語で”こんにちは”と口にする。
 ノルド語は即座に理解して、リィもまた同じように返した。
 西アフリカ諸語のほうは少し時間が掛かったが、返事することが出来た。
 さらにスワヒリ語、古代エジプト語、ヘブライ語でもまた繰り返してみせる。
「……ごめんなさい、全然解らないです」
 リィだけでなく、船員全員が首を傾げていた。
「まあ、ギャルよ。漢(おとこ)なら身振り手振りでなんとかするもんだ」
 かおるの茶化すようなその言葉に、リィの首はさらに傾く。
 言葉の意味はよく把握していない。
「魂があれば、それだけで会話は通じる。言語なんていらん」
「ほーう」
 息を吐いて、アイはにやりとした。
 そしていきなりかおるに向けて、様々な言語で話し始める。
「魂があるんでしょ? それなら解るはずよね」
 口にしたその言語は、西アフリカ諸語だ。
 当然その辺りの言葉を知らないかおるには解る筈もなく、只管視線を逸らしている。
(アイさん、意地悪……)
 フェレットとリィはただ苦笑いしていたが、
「アイさん、酒が切れたって言ってる」
かおるのそんな声が響くと、二人は声を立てて笑った。
「言ってない! 言ってないわよ! もう、大体貴方達がそんなことばっかり言うから酒飲みのイメージがこびりついて……」
「どうぞ、姐御……いや、船長」
 反論するアイの元に、敏速な対応でワインが持ってこられた。
 かおるの声で即座に反応した”シャルトリューズ”の船員の仕業である。
「この船長にしてこの部下あり、ってわけだね」
 フェレットが言うと、またどっと笑いが巻き起こるのだった。
 船団がリスボンで過ごした最後の時間は、そんな柔らかな幸せに包まれて。
「――お待たせしたっす。準備出来ましたよ」
「ああ、こっちも出来てるよ」
「それじゃ行くとすっか」
「交易品もたっぷり積んだことだしね」
 背後から呼びかけを受けて、フェレット達はそれぞれに声を返した。
 北海から来たと言う少年もまたそれに応じる。
 和やかな空気に包まれている一行を見て、
(ちゃんと意思の疎通は出来てるみたいっすねえ。これなら”それなりに”助けにはなるかな。後は戦闘技術か……)
パングはそう、静かに思うのだった。
 彼もまた一人の冒険者である。
 その棘のない外面の中に、冷静に状況を見極めることの出来る確かな判断力を併せ持ってもいた。
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  1. 2005/04/10(日) 01:54:36|
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