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航海タイム

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第二章 海が果てるまで(前編)

1

 数日の航海を経て、一行はセウタの町へと帰り着いた。
 イベリア半島から最も近い場所に位置するアフリカの町がセウタである。ロンドンやセビリアなどに比べると小さな町であったが、強い太陽の光に彩られたこの町特有の色が好きで、フェレットはこの辺りを通るたびいつも”セウタに寄ってこう”と口癖のように言っていた。
 灰色さえも鮮やかな白に見紛わせるほどに、空から射し込む光は眩く強いが、砂漠の蒸しかえるような熱さとは種の違う心地のよい光だ。
 セウタに着くと先ず、フェレットはかつて訪れた際に知り合った壮年の夫婦の家を尋ねた。さすがに全船員でおしかけるわけにもいかず、フェレットとアイ以外の船員は皆酒場へと直行している。かおるもこちらに来るはずだったのだが、船員達に半ば強引に酒場に連れて行かれてしまった…彼自身は、酒は殆ど飲めないのだが。
「しかし嘘みたいな話だね。砂漠に女の子が埋もれてたって? しかもまだ生きてるってさ」
 恰幅の良い女性が言葉を口にしながら、その女の子のことを抱きかかえて部屋へと入ってきた。
 ぼろぼろだった服は、彼女の手によって着替えさせられている。
「服はボロ雑巾みたいになってたんで捨てたよ。生地も普通だったし、あれくらいならまたあたしが買ってやるさ」
 彼女はここの家の住人であり、この辺り一の面倒見の良さで知られているフアナと言う女性だ。
 夫は酒場のマスターをしていて、かおるが酒場で潰れた際に彼女の介抱を受けたことから、縁が始まっている。
 フアナは、少女のことをベッドに寝かせた。
「フアナおばさんより、僕等の方が嘘みたいだと思ってるよ。最初は化石か何かと間違えそうになったくらいなんだ」
 フェレットの言葉は冗談めいているが、神妙な口調だった。
「ドラゴンの骨を探してくるって話だったのにねぇ。まぁ、こっちのが可愛らしくて良いかなーなんて私は思うけど」
 アイも同じで、未だに何かの間違いだと思っているフシさえあった。
 肝心のドラゴンの骨は結局見つけられず、頼まれた依頼は挫折しかかっているが、ひとまずそっちはさて置くしかない。
 ベッドに寝かされた少女の姿を、フェレット達はまじまじと見つめた。
「肌の色は私達と同じね。一体どんな経緯であの砂漠にいたのかしら」
「多分、ドラゴンの骨を見つけようとして見つけられなかったんだよ」
「そうかもね。フェレさんみたいにね」
 アイはくすくす笑いながら口にした。 言わなきゃ良かったと思って、フェレットは肩を竦める。
「でも、航海の間は”シャルトリューズ”に乗せてたんだからさ。一回くらい目を覚まさなかったの?」
「全然。ずっとうなされてるだけだったわ」
「ふーん……」
 彼らの船団は三隻の船を所有しているが、船員はアイを除けば何れもむさくるしい男ばかり。
 男の群れの中に置いておいては何をされるかわからないと、アイにあらぬ疑惑をかけられて、少女はアイの所有する船である”シャルトリューズ”に保護されていた。
「顔色は悪くないし、そろそろ目を覚ましてもいいはずなんだけどねぇ。……あんた達も疲れてるでしょ、この子はあたしが看といてあげるから、酒場に行ってきな」
 フアナは自身の腹をボンと叩きながら言った。
 それは二人にとって――特にアイには魅力に満ち溢れた誘惑であった。
 フェレットはまずアイの返事を聞こうと、彼女の方を眺める。
 アイはこちらの反応を待っていたようで、視線が交差した。
「そう言えばアイさん、僕等が骨探しをしている間に、一回も酒宴を開いて無かったそうじゃないですか。どんな風の吹き回しです?」
「……そんな、物珍しげに言わないでよ。皆が砂漠で苦労している時に飲んだくれている訳にもいかないでしょう」
「相当我慢したんでしょうね。今はもう砂漠じゃないし、行ってきても平気ですよ」
「フェレさんはどうするの?」
「一応連れてきた責任もあるし、僕はもう少しここにいるよ」
「そっか。うーん私はどうするかな」
 アイは悩んでいるかのような仕草を見せたが――その顔は、明らかに飲みたがっている様子であった。
「ほら、やっぱり。それじゃあ行ってらっしゃい姐御」
「姐御って言うな!」
 最近船員達の中で流行っているあだ名を、フェレットは手向けとした。
 数時間の後に、少女はようやく目を覚ますことになる。
 それはまた、フェレット達を驚きの渦へと叩き込む事になるのだが。

2

 先ず家へと帰って来たのはかおるで、千鳥足でベッドに辿り着くなりバタリと倒れ伏し、とりあえず今日はもう目を覚ます気配は無さそうだった。
 少し遅れてアイが帰ってきた。
 そろそろ帰って来る頃だと思って入り口で待っていたフェレットが、いつものように水を差し出す。
 彼女も顔はすっかり赤くなっていたものの、船員の誰よりも酒に強いと噂される彼女のこと、まだ意識は十二分に保っていられているようだ。
 それでもシラフの状態であるフェレットとは気分の差が相当あるらしく、フェレットはいささか引き気味であったが。
「アイさん。あの子、目を覚ましたんだよ」
「えっ! ほんとに?」
 水の入ったグラスを取り落としそうになって、アイは声を上げた。
 フェレットの言葉を待たずに寝室へと向かおうとする。
「ちょっと、いきなり酒を進めたりしないでくださいよ?」
「するか!」
 アイの後を追って寝室へと向かうフェレット。
 その足取りは心無しか、躊躇いがちだった。
 それもそのはずだ――。
「フアナおばさん! さっきの子、目を覚ましたんですって?」
「ああ……おや、もう帰って来たんだね」
 部屋にやって来たアイに比べて、フアナの声には元気がない。
「やっと目を覚ましたのは良かったんだけどね。色々と問題があるみたいでねぇ……」
 フアナとフェレットは、視線を少女へと向けた。
 少女はベッドから半身を起こしていて、無垢な目でアイのほうを眺めて、
「あの……私、何も覚えてないんです。なんで砂漠にいたのか、自分が誰なのか……」
 そう、言った。
 声には戸惑いが混じっていて、彼女の言葉に嘘偽りが無いのは明らかだ。
「色々聞いたんだけど、本当に覚えてないみたいなんだ。記憶喪失ってやつだよ」
 こんな事が実際にあるんだな、とフェレットは溜息混じりに続ける。
「記憶喪失……」
 アイもまた同じように呆然としたが、さすがフェレットとは違い、まず少女の事を気遣うべきだと思い立った。
「自分の名前は、覚えてないのかしら」
「はい……船のベッドで眠っていたのは覚えていますけど、それ以前の記憶が何も無いんです。砂漠に倒れていたなんて…」
 少女の声は静かで淡々としていた。
 誰よりも混乱しているのは彼女自身、そのあまりに感情の行き場を見失っているのか。
 何も覚えていないのに、何かに対して激情をぶつける事など出来やしない。
「貴方自身、今はきっと気持ちの整理がつかないでしょうけど…私達で良かったら力になるわ。大丈夫、これでも私達は善良な船乗りだから!」
 言葉だけなら、チープに思えなくもない内容だ。しかし、包む込むような暖かさが確かにそこにはあった。
「そう……だな。僕等が悪い奴だとしたら、そもそも君をここまで連れて来たりなんかしないだろうしね」
 フェレットは小さく頷きを繰り返しながら言った。彼女にと言うより、自分に言い聞かせるようにして。
 まだ少女にどう接して良いか、解りかねているようである。
「この二人の人格はあたしが保証するよ。妄想癖の有る坊やに姐御肌の大酒飲みと来ちゃいるけど、人間は割と出来てるからね。……もう一人、色々と問題があるのがいるんだけど」
 意識してかしないでか、フアナはそんな毒舌を吐いた。
 ちなみに彼女の言う”もう一人”はすぐそこのベッドで死んだように眠っている。
「あんまりじゃないか、おばさん。アイさんはともかくとして僕は妄想癖なんかないよ。想像力が旺盛なのは確かだけどね」
「そうよ……フェレさんはともかくとしてもねぇ。大酒飲みって言うのは皆が言っているだけなんだから」
 互いの発言に被るようにしながら二人はそんなことを口にし、その後互いの顔を訝しげに睨み付ける。
 その仕草があまりに自然で可笑しかったのか、少女の口元からは自然に微笑みが零れた。
 くすくす、くすくすと小さい声で、彼女は楽しそうに笑っている。
「あれ……」
 フェレットとアイもすっかり毒気を抜かれてしまって、二人もまた照れ笑いを浮かべるのだった。
「……安心、しました。なんだか良い人達ばっかりで……」
 その少女の声には、ほんの少しの感情が篭っていた。 安堵感がそうさせたのだろう。
「私、考えてみます。何かのショックで忘れているだけで……きっとすぐ、思い出せるでしょうから」
 言葉が吐かれると共に、彼女の瞳から頬へとかけて、涙が伝った。
 それもまた、安堵感からくるものか。或いはとてつもなく大きな不安によるせいなのか。
「あんたがいたいだけ、ここにいれば良いわ。記憶が戻らなかったら戻らなかったで、そのままここに居着いても何も問題は無いからね」
 フアナは言った。
「そうなってくれると嬉しいね。またセウタに来る楽しみが増えるってもんさ。やっぱり美女がいる町には足を運ぶ頻度が増えてしまうからな、どうしても」
 フェレットは例の妄想癖を散々に発揮して、そんな言葉を口にした。
 後半はぶつぶつと、まるで独り言のような呟き声であった。
「けど、その前にちゃんと記憶を探さないとね。私達も船員総出で手伝うとしましょう? フェレさん」
 酔っ払っているはずのアイだが、口調はこの場の誰よりもしっかりしている。
 やれ酒豪だ飲んだくれだなどと言われつつも、彼女はどの船員よりも面倒見が良く、そして何事に関しても大人であった。
 ……もっともそのせいで”姐御”などと言う本人の意にそぐわないあだ名をつけられてしまっている訳だが。
「私も全身全霊を賭して手伝おう」
 眠っていたはずのかおるが突如起き上がり、アイに劣らぬしっかりとした口調で言葉を連ねた。
 それ以前の会話を耳にしてはいないはずなのだが。
 しかしそんなかおるの声も、そこまでで途切れた。
 自分より体重が重いであろう女性に、上にのしかかられたせいだ。
「あらかおるちゃんてば! 酔いのせいで何も聞こえてなかったのに強がっちゃったりして、可愛いんだから……もう、人間的には色々問題があるクセに何でそんなに魅力的なのかしら!」
「イタタタタ! 死ぬ死ぬ!!」
「殺されたくなかったらあたしと結婚しなさい! もういい加減観念して!」
「ヒトヅマはちょっと!」
(え……?)
 フアナが突如として取った奇怪な行動に、少女はぽかんとして目を丸くした。
 猟奇殺人でも起きかねないと感じる程に、衝撃的な光景が目の前に展開されている。
「あの……これ、どう言う……?」
 訊ねられたフェレットもまた、少女と同じようなリアクションを取っていた。 若干呆れているようにも見える。
「見ての通り。フアナおばさんはその……かおるさんって言う、僕等の仲間に惚れてんのさ」
「はっ? 惚れてる……って」
「察してもらうしかないわね」
 アイはどう説明して良いか、困っている様子だ。
「あたしは別に不倫でも何でもするわよ! さあ、あとはかおるちゃんの覚悟次第なのよ!」
「無理! 死にたくない!」
 呆れるフェレット達を余所に、二人の狂騒夜はまだ当分続きそうだった。

3

 翌日、フアナの夫であるアントニオが帰宅した時点で、話は進展を見せた。
 事情を話した所、彼は心当たりがあると言ったのだ。
 彼の経営する酒場には様々な客が訪れ、そして様々な情報が持ち込まれる。
 その中でアントニオはこんな話を耳にしたのだった。
”セビリアの貴族の娘が、海で遭難して行方不明になっている”。
 アンダルシア地方で最も大きな町であるセビリアは、セウタからは数日で行くことの出来る距離に有る。
 各国からの商船もよく訪れるセビリアは他の町に比べて設備も整っており、フェレット達もここ数ヶ月の航海はセビリアを拠点として行っていた。
 その行方不明になっている娘こそがこの少女なのか、今はわかるべくもない。
 それを確かめるには実際に、行方不明となっている娘の家族に会ってみるしかない。
 真実を確かめるべく、フェレット達は今船出の準備にかかっていた。
 船員の大半が二日酔いのせいもあって、作業は一行にはかどらないようであったが。
「ようやく食料を積め込み終わったな。全く、予想通りとは言え…もうちょっと自制してほしかったな」
 出航の準備が整った自身の船”フォスベリー”の上で、純白の帆を見上げながら、フェレットはぶつぶつと愚痴っていた。
 普段なら作業の遅延に対してもあまり文句を言う事はないのだが、今は事情が事情だ。
 一刻も早く、少女を家族と再会させてやりたい。
 それはフェレットだけでなく船員全員の意思であったが、酒の魔力は予想以上に強力なようで。
「あの……私にも、何か手伝える事はありませんか?」
 後ろから声を掛けられてフェレットが振り向くと、少女が立っていた。
「ん、大丈夫だよ。後はもう出発するだけさ。体調もまだ万全じゃないんだろ?」
「はい。でも……」
「良いから。今から出れば、一日か二日後には家族と再会出来ると思うよ」
 フェレットはにこりと笑ってみせたが、少女は何処と無く不安げな様子。
「本当に、私がその貴族の娘なんでしょうか……?」
「そうだろう。あまりにタイミングが近過ぎる」
「けど、もし違ったら……」
「そしたら見つかるまでこの船にいれば良いさ」
「……ありがとうございます」
 陸上とは違い、船は常に不規則なリズムで揺れている。
 少女は何故か、それを心地よく感じていた。
 きっとこの感触は初ではない。
 そう思っても、まだそれを口に出来る程の根拠は無かった。
「それじゃ、そろそろ行こうか。僕を除いてむさっくるしい男ばっかだけど、ちょっとの間だから我慢してくれよ」
「そんな、我慢だなんて……私別に、嫌じゃありません」
「なら良かった。久々の女船員だし、皆貼り切ると思うよ」
 その言葉からは”アイさん以外の”と言う一節が省かれている。
 故意なのか素で忘れていたのかはわからない。
 砂漠からセウタへと向かった際には、少女はシャトリューズに乗せられていたのだが、今度は違う。
 士気を上げるためにそれぞれの船に女性を一人ずつ乗せよう、と言うフェレットのいささか訳の解らない提案によって、女性三人が各船へと振り分けられたのだ。
 その一人はシャルトリューズの船長であるアイであり、フォスベリーには少女が乗る事となった。そして残る一船、かおるの駆る”永久機間”に乗り込んだ女性とは。
「ほらあんた達、もっとシャキッとしな! 二日酔いが何だっての!」
 海を渡ってそんな声が届いてきて、フェレット達は思わず眉を潜めた。
 男ばかりの船において、紅一点であるフアナの声が一番大きいとは…と、フェレットと少女は顔を見合わせて笑った。
 本来の船長であるかおるもやはり二日酔いで、暫定的にフアナが船長の座に収まっている、ようにフェレット達からは見えた。
 フアナが船に乗り込んでいる理由は、かおるに付いて行くため……ではない。
 自身が世話をした少女のことが気になって、セビリアまで連れて行ってもらうようフェレットらに頼み込んだのであった。
「フアナおばさんも夫のアントニオさんも、元々は船乗りだったって言うからね。頼りになりそうだけど、セビリアまでの航路は騒がしくなりそうだ」
「へぇ……そうなんですか。船上で知り合って、結婚したのだとか……?」
「らしいよ」
「へぇ! ロマンチックですねぇ!」
 控えめだった声が少しだけ明るさを帯びた。
 例え記憶を失っていようと、女性だけあってこう言った恋愛沙汰には敏感なようだ。
「酒場で飲む度に聞かされてるんで、僕まで覚えちゃったよ。……んまぁ、ロマンチックって言ってもあのおばさんの話だからな。実際はもっとどろどろしてて、えげつないもんだったに違いないだろうさ……フガッ!」
 至近距離から飛来した猫の置物を後頭部に浴びて、フェレットは悶絶した。
 木造りの猫の置物は、航海の間に鼠が沸いたりしないようにと、願掛けをする為の道具である。
 それを投げて使用したのは、何時の間にかフォスベリーへとやって来ていたフアナ。
「人が聞いてないと思って、勝手な事ばかり言ってくれるじゃないかい。これでもあたしらが結婚するまで、坊やには想像出来ない程の素晴らしいロマンスがたくさんあったんだよ」
 万感を込めたフアナのその声も、地面に這いつくばって苦しんでいるフェレットには聞こえていない。
「かおるちゃんの船もシャルトリューズも、準備オッケーだよ。それじゃあそろそろ出航と行くかい!」
「イ……イェッサー!」
 フアナの号令に、船員達は戸惑いながらも声を揃える。
 本来の船長は声も発せない程になっていたが、お構い無しに錨を上げる。
 そんな風にして、三隻の船はセウタの町を後にした。
 吹き込んでくる風は背中を後押ししてくれて、射し込む光に行く手を照らされながら、彼らはセビリアへと向かう。

4

 セビリアに辿り着いたフェレット達は早速、貴族達の屋敷が多く並ぶ地区へと足を運んだ。
 単刀直入に、娘が行方不明になった貴族の所に乗り込んで名乗り出ようとしたのだが、その考えが大分甘いものであったことを、彼らは直ぐに思い知らされるのであった。
「一体何の御用ですかな? 用が無いのでしたら御引取り願いたい」
 屋敷の群がある地域に入ろうとしたところで、衛兵に行く手を遮られた。
 嫌な予感がして、フェレット達はそれぞれの顔を覗きこむ。
 皆の視線は落ちつきが無かったが、やがてアイの方へと傾き集中した。
「あの、私達、ここの地区に住む方に用があってやって来たんですが……」
 無言の催促を受け、アイは少々戸惑いがちに声を出したが、
「すまないが、それならせめてもう少しまともな身なりをして来てもらおうか。 そこらの船乗りや海賊紛いの人間にいちいち会ってやれるほど、ここに住む方々は暇じゃないのだよ」
 けんもほろろな様子で断られてしまった。
 あまりな物言いにフェレットとフアナは顔をしかめている。
 アイはとりあえず表面上は体裁を繕っているが、長い付き合いになるフェレットからしたら、彼女も怒っていることが見え見えであった。
 ただ一人、かおるだけがいつもの仏頂面のままで、
「人を見た目で判断するのは良くない。私が行方不明になっている貴族の娘だったりするかもわからんし、 そうだとしたらあんたの首が飛ぶかもわからんよ」
 フェレットらの背筋が寒くなるような反論を始めた。
 まさかと思い、フェレットらは恐る恐るの方を見やったが、声は止まらない。
「海賊紛いって言ったけど、私達の何処がそんな風に見えたと言うんだね。私達の行動はむしろ貴族的だし、本当の海賊ってのはもっとこう、破壊的な……」
 例を見せようとばかりに、鞘に収まったままの剣を腰から引っこ抜き、丁度宙を飛び回っていた小さな虫に向けてそれを叩き付けようとした所で――。
「かおるさん、落ちついて!」
 フェレット達に一斉に取り押さえられた。
「おい、貴様等……何のつもりだ? その剣で誰をどうするつもりだと言うのだ」
 衛兵の声が一気に警戒心を帯びる。
「いや、違うんです! この人ちょっと、その、おかしいだけで!」
「私達がよく言って聞かせておきますから……失礼しました、本当に!」
 放っておいてはとんでもないことになるとばかりに、フェレットとアイは慌ててまくし立てた。
 フアナはかおるの相変わらずの剛毅さに……もといやんちゃぶりに感極まっているらしく、様子を黙って見ているだけだ。
「そ、それじゃあすいませんでした!」
 このまま此処にいてはまずいことになると判断して、一行は逃げる様にして場を立ち去った。
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  1. 2005/03/11(金) 07:53:00|
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