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航海タイム

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第一章 航海の途中

1

 とある名前すら無い砂漠に彼らはいた。
 建物も、当然人々の気配もない空間。
 そこで彼らは只管に”物探し”に没頭をしていた。
「ねぇ、かおるさん」
 青年が口を開いた途端に小さな砂嵐が襲来し、青年はゴホッ、ゴホッと砂を吐き出す。
 再び周囲は無音になったが、彼の言葉に対する返事はない。
「ちょっと……かおるさん」
「駄目ですぜ、今は」
 仲間の一人にそう言われて、青年は目を細めた。その後、砂埃で大分汚れた服を両手で払い落とす。
 この場にいる者の大半は、逞しい筋肉を薄汚れた白い服で覆い隠した、いかにも船乗りと言った格好をしているが、この青年は違った。
 高貴な香りを匂わせるベルベット製の青いチュニックを身に纏っていて、右耳には赤い宝石のピアス。
 髪の毛はどう見ても天然色ではない派手な緑色で、そしてその長さは肩の辺りまである。
 一見すれば女性に見えなくもない容貌をしている彼はしかし、一つの大きな”城”の主であった。
 その城の名は”フォスベリー”。白く大きな翼を持った、海を駆ける城。
「船長……あのヒトも飽き飽きしてるんでしょうぜ。何せこんな事に、もう五日もかけてるんですから」
 返事が来ない理由を、船員はそう説明する。
 青年はうーむと唸った後、また探索に戻る事にした。
 尤もな話だ、と自分でも思っていたからだ。
「何か言った? フェレッチ君」
 そんな言葉が返ってきたのは、それから一分も後のことだった。
 フェレッチと言うのは青年のあだ名…みたいなものだ。
 彼の本名はフェレットと言う。
「いや……そっち、何か見つかったかなあと思って。そろそろ」
「相変わらずサッパリ」
「や、ヤッパリ?」
 視線すら向けられずにそんな事を言われて、フェレットはあはは、と笑いを浮かべるしかなかった。
 砂漠地帯であるせいか、その笑いは相当に乾いたものだ。
 かおるからこれ以上言葉が返って来る気配は無いと察し、フェレットは再び付近にいた船員と言葉を交わす事にした。
「大体船長が、安請け合いをすっから……ドラゴンの骨なんて、どう考えても有り得ない話だと思いやすぜ」
「有り得ない話だからこそ、そこにロマンがあるんだろう?」
「またそうやってごまかす」
「ごまかしてる訳じゃない。皆が無いと思ってるものを見つけてこその冒険家ってもんじゃないか!」
「だったら、食料が無くなる前に見つけるとしやしょうぜ」
「……了解」
 どっちが船長だよ、と自分で言っていて思ったが、船員の大半は殆ど同い年の仲間ばかり。
 船長と言っても殆ど名ばかりで、皆対等の友人達である。
 それから一時間くらいは会話らしい会話はかわされず、皆無言のまま作業をしていた。
「いい加減街に帰りたいですぜ、栄養のある物を食べないと力が出やせん」
 久々の声がそんな嘆きだったので、フェレットは苛立ち混じりにビスケットでも手渡そうとしたが、
「フオオオオオ!」
 全ての行動は、そんな叫びによって断じられた。
 長い付き合いだ、その雄叫びが誰のものかは皆一瞬で理解している。
「かおるさん、どうしたんです?」
 先んじてフェレットが訊ねると、かおるの顔がきっとこちらを向いた。
 彼の手に握られていたシャベルが、ぽろりと地面に転がる。
 驚いているのか何なのか判断つきかねるが、その顔はとりあえず歪んでいた。
「あ、アッタアアア! アッタヨ! 骨が!」
 第二の咆哮を受けて、船員達は皆かおるの方へと駆け寄った。
 かおるが指差している先の地面には、確かに妙な質感をした物体が覗いていた。
 勿論まだ、大半は地中に埋もれたままだ。
「見過ごす手は無いな。よしみんな、掘り起こすよ」
 フェレットが指示する。
「イエッサァ!」
 船員達は無我夢中に周囲の砂を掘り返していき、みるみるうちに全形が明らかになっていく。
「これが終わったら報酬でウハウハで、最低二日は飲み明かすぞ! 頑張れ!」
 この中で一、ニを争うほど非力なフェレットは応援に徹していたが、その顔は喜びに満ちている。
 熟練の冒険者と言えど、そろそろ疲労が限界に来ていたところだったのだ。
 また数分が経過し。
 ようやく姿を現したドラゴンの骨は大分小さく、しかも一般に想像されているであろう姿に比べて大分いびつだった。
「……これ、アザラシかなんかの骨じゃあないか? こないだの依頼の時に見つけた……」
 フェレットの言葉に、数人が頷く。
 確かに大きさはそれくらいだし、ドラゴンにしては顔の形状があまりにも丸過ぎる。
 希望に満ち溢れていた皆の表情が、見る見るうちに絶望を湛えていく。
「実は大昔からドラゴンだと思われていた生き物は実はアザラシだった! なんて事無いかな」
「無いでしょう」
「有るわけねぇ」
 冗談めいてフェレットは言ったが、皆の反応は予想以上に冷たく、フェレットをさらに落胆させた。
 皆もそれぞれに肩を落として落ち込んでいる。
「アザラシとドラゴンを勘違いするなんてな。僕等も落ちたもんだ……」
「よくある」
 かおるは全てを一言で済ました。
 発見した張本人の反応が、一番あっさりしていると言うのも変な話だ。
 とは言え、彼らは何時だってこんな感じなのだけど。

2

「よし、じゃあ帰るか。そろそろ」
 アザラシとドラゴンを誤認した辺りで一行の気力はほぼゼロになったようで、捜索を続けようと言う者は誰一人としていなかった。
 帰路を行く彼らの足取りも、まるでアザラシみたいにのそのそ遅い。
「アイさんも待ち兼ねてるんだろうな。散々待たせておいて……」
 フェレットは、自分とかおる以外の、もう一人の船長の名を口にした。
 三隻の船を見守る役目も有って、彼女と数人の船員達は、船に残ったままなのだ。
 フェレット”のフォスベリー”、アイの”シャルトリューズ”、そしてかおるの駆る”永久機関”の三隻が、今の所の全戦力である。
「姐御のことだ。船内の酒を全部飲み尽くしてるかもしれやせんぜ」
「それは予想の範疇さ」
 元気が無いながらもそんなことを言いつつ、ようやく船の姿が見える場所まで彼らはやって来た。
「あのさ、かおるさん」
 フェレットは名前を呼んだが、またも返事は無かった。
「……あれ? かおるさんは」
 それどころか、気付けばかおるの姿自体がここから消えていた。
「やれやれ、どっかで餓死してないと良いけど」
 フェレットがキョロキョロと辺りを見回してみると…遥か後方に、かおるの姿があった。
 大きな岩の側にいて、何故かそこで立ち止まっている。
「何……? おーい、かおるさん!」
 フェレットの呼び声。
 それはかおるに届く所か、周囲の誰にも聞こえる事は無かった。
「フオオオオオオオオオアアアアアアオオーーーーッ!!?」
 ドラゴンのそれにも匹敵するかおるの雄叫びがまた、全てを掻き消したのだ。
「もしやっ!」
 今度こそドラゴンの骨が見つかったのかと、フェレットと船員達は気力を振り絞って走った。かおるの顔を見るより先に、彼の視線の先をギンと睨み付ける!
 睨み付けたまま、彼らはまるで石像のようになってその場に固まった。
 砂漠に捨て置かれた数十の石像は、あんぐりと口を開いている。
「ほ、フェ、フェレッチ君……! これがドラゴンの骨か!?」
 かおるの慌てぶりが、逆にフェレットを冷静にさせるのだった。
「いや、どう見ても僕達の同類でしょ。コレ」
 ――それどころか、骨ですらなかった。
 そこに倒れていたのは一人の女性。
 ドラゴンの骨こそ見つからなかったが、代わりに有ったのは一つの”出会い”だったのだ。

 果てなき海の先に求める物がきっとあると信じて、人は冒険へと繰り出して行く。
 出会いもまた、運命の一つ。
 例えるなら航路の途中に偶然目にした、素晴らしき景色のようなもので。
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  1. 2005/03/08(火) 02:10:24|
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