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航海タイム

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第二章 海が果てるまで(後編)

5

 三十分後、セビリアで最も大きな酒場に彼らは辿り着いていた。
 その間に陽も沈んでしまい、今日はもう行動を起こすことは難しそうであった。
「全く、冗談と本当の境目も解らんとは困った奴だ」
「境目がついてないのはアンタのほうだよ!」
 さして反省する様子もないかおるに対して、フェレットは荒い声で言った。
 怒っていると言うより、半ば呆れているに近い。
 声が荒いのも、どちらかと言うと空きっ腹に酒を流し込んだせいによるものが大きい。
「確かにあの衛兵の態度は悪かったけど……あんな事をしちゃったらもう、二度とあそこには近寄れないですよ」
「でも、本当に嫌な感じだったわね。私は前にもあそこを訪れたことがあるけど、その時はもっと丁寧な対応をしてくれたわよ」
 アイもまた、怒り冷め遣らぬ様子。
 言葉の後、いつものようにワインのグラスの口へと傾ける。
「貴族ってのは奢り昂ぶった奴が多いのは確かさ。その下僕も含めてね。まあ、中にはましなのも居るんだろうけど」
 皆を静めようと務めていたフェレットもまた、ぽそりと本音を洩らすのだった。
 声は少女にも届いていて、彼女の金褐色の瞳には悲しげな光が宿っている。
 そんな様子に、フェレット達が気付く事は無かった。
「で、どうするんだい? この子がちゃんと記憶を取り戻す為には」
 愚痴ばかりが繰り返されそうな空気を、フアナが断ち切った。
 言葉を受け、一行は考え込む。 考えて、どのみち手段は一つしかないとの結論に達した。
「身なりさえちゃんとしてれば通れるって言ってたのだから、もう一度行きましょう。さっきの事件で私達は相当怪しまれてるかもしれないけど……この子が例の行方不明になってる娘さんだって判れば話は済むわ」
 アイの言葉は同時に皆の意でもある。
「しかしその言い方だとまるで、僕らの身なりがちゃんとしてないみたいだよな……。海賊みたいな格好のかおるさんはともかくとして、僕はこれでも良い物を纏ってるつもりなのにさ」
「私、海賊だし。海賊で何が悪い」
 フェレットとかおるはなおも様々な不満を抱いているようであったが、船員達が次々運んでくる酒に浸ったせいで、やがてどうでもよくなった。
 そして翌日――極度の頭痛に襲われながら、彼らは昼過ぎに酒場を出立する。

6

 昨日門前払いを食らった貴族の屋敷が立ち並ぶ区域から、少し離れた場所で彼らは会合を開いていた。
 淡い色をしたドレスに身を包んだ少女の姿からは気品さえ漂っており、その他ブーツ等も全て高級な品で揃えている。
「馬子にも衣装って言うけど君に関しては当てはまらないね。なんだかこっちが本来の姿って感じがするよ。似合ってる、素晴らしい」
「うん、ナウくてイカしてるね」
「羨ましくなるくらい似合ってるわよ」
「私も若い頃は相当の美人だったんだけどねえ。今のあんたにはちょっとかなわないわ」
 一行はそれぞれの個性に任せた台詞でもって、散々に少女のことを褒めちぎる。
 彼女は対応に困って、顔を赤らめて俯いている。
 ちなみにフェレット達の格好は何ら変わっていない。
 本来なら彼らも服装を一新する予定であったものの、予想外の値段に泣く泣く諦めたのだ。
「……ここまでで平気かい? そしたら、僕等はまた酒場で待ってるけど……。ああ、付いていけないなんて残念だ。悔しい」
 衛兵の鼻を明かしてやろうと息巻いていただけに、フェレットは本気で残念そうだ。
 つい先日に、アイの駆るシャルトリューズを皆の貯金を合わせて購入したばかりで、今現在懐は相当寂しい状態。
 それは理解していたのだが、まさか服さえ買えない程だとは。
「良いかい? 何かあったらすぐ戻ってくるのよ。今度さっきの衛兵が変な事を言ったら、今度こそあたしらの出番よ」
 フアナはそう言って力瘤を作ってみせた。
 この腕で殴られたら、フェレット程度の体格なら一撃でノックダウンされてしまうだろう。
「任せておけ。準備は出来てる」
 腰の剣に手をかけているかおるに向かって「いやそれはまだ早い」とフェレットとアイが声を重ねた。
 この男が本気なのか冗談なのか、フェレット達でさえ掴めない時が稀にある。
「それじゃあ、行って来ます。あの……」
 歩いて行こうとしていた少女は途中で振りかえり、再びフェレットらを見やった。
「ありがとうございました。フェレットさん、かおるさん、アイさん。フアナおばさんも……本当に、お世話になりました」
 彼女は深く頭を下げて、そう言った。
「こちらこそ……と言いたい所だけど、まだ早いな。待ってるから、とにかく頑張って来なよ」
「はい!」
 フェレットの言葉を受けて、少女は駆けて行った。
 次に再会した時には、彼女はもう”記憶をなくした少女”ではなくなっているかもしれない。
 自分達の知らない面が表を向いた、”貴族の娘”となってしまっているかもしれない。
「……惜しいなあ、何だか……」
 華やかな雰囲気がそこから欠けた後、フェレットはそんなことを小さく呟くのだった。
 誰しもが、きっと同じ事を思っていただろう。

7

「よし、通って良いぞ」
 昨日とは打って変わった対応をされて、少女は奥へと通された。
 門の前にいたのは変わらず同じ衛兵であったが、どうやらこちらのことを覚えてはいないよう。
 ……きっと、かおるさんの印象があまりにも強過ぎたんだろう。少女はそう思う事にした。
 案内された先にあったのは、少なくともここ数日の記憶の何よりも豪華な造りをした建物の群。
 如何なる理由でここを訪れたのかを訊きもせず、衛兵は自身の持ち場へと帰って行った。
 少女はきょろきょろと辺りを見回したが、目的の場所は何処なのか、直ぐに判断がついた。
(何、あれ……人だかりが……?)
 一つの屋敷の前に、長蛇の列が出来ていたのだ。
 よく見るとその列に並んでいるのは皆、女性ばかり。
 自分と同じような服装をしているもの、やたら豪華な装飾をしたドレスを羽織ったもの……様々で、少女は奇妙な感触を覚えた。
 違和感を感じたのは、そこにいるのが女性だけと言うことに関してでは無かった。
(みんな、同じくらいの背をしているわ……。体重も……)
 服装こそ完全に統一されているわけでは無かったが、それ以外は皆、似通った特徴の女性ばかりがそこには集まっていた。
 金色の長髪に、小柄で痩せ型の女性。……自分もまた、その特徴にぴたりと一致をしている。
「あの……ここで一体、何をしてるんですか?」
 意を決して、列の一番最後尾にいた女性に訊ねてみた。
 鼻をつんとつく匂いが立ち込めていて、思わず鼻をつぐみそうになってしまう。
「何って、あなたも私達と同じ目的で来ているのでしょう? 服装も、髪型も同じじゃない」
 反応に困っていると、女性はやれやれと言った様子で説明を始めた。
「ディーランド家のレメディオス様が遭難して行方不明になった事件は知ってるわよね。遭難したのはもう数日も前の話だし、海に投げ出されてそうそう助かる訳がない……もう捜索は諦めたって話だわ」
「それで、どうなったんですか?」
「あなた、本当に知らないの? もしかしてレメディオス様本人を装ってるんじゃないでしょうね」
 逆にそんなことを問い返されて、少女はしどろもどろになった。
 そう言われても、記憶が無いだなどと説明するわけにもいかない。
「……しょうがないわ、話してあげる。ディーランド家の当主であるジョアン様は大の娘好きで有名だったの。それこそ目に入れても痛くないくらい、レメディオス様を愛してらしたって話だわ。だから諦め切れなくて、娘と同じ特徴をした女性を探し出したのよ。髪の毛と瞳は綺麗な黄金色、肌は宝石のように眩い白、そしてレメディオス様が着てらしたというドレスがぴったり似合う女性。それがジョアン様が出した条件なの」
「えっ?」
 話を最後まで聞き終わり、少女は心底不思議そうな声を放った。
「……でも、たとえ特徴が一致してたとしても、本人とは別人なのに」
「ね、変な話よね。まあでもねえ、噂ではジョアン様は妙な性癖を持ってた……なんて言われてもいるし……ね」
「どう言う意味ですか?」
「レメディオス様と同じ特徴をした娘が好みだって事よ、つまり」
「どう言うこと……ですか?」
「分からないなら良いわ。貴方も貴族の娘になろうとしてここに来たんでしょ? ならこれ以上親しく話す道理は無いもの。……まぁ、よく知らないんだったら帰った方が良いと思うわよ。噂じゃあ、背中にある黒子の数までチェックされるって言う話だから」
「ちょっとあんた! 声が大きいわよ! 他の皆が静かにしているんだから黙ってなさいよ!」
 前列の方から罵声が響いて来て、会話は其処までで途切れた。
「ふん、言われなくてももう喋らないわよ。全く、審査の前だからってピリピリしちゃって」
 苛立ちを含んだその独白に、少女ももう声を返そうとはしなかった。
 今のこの状況が解りかねていて、どうすればいいのか解らないまま、ゆっくりと列は進んで行く。
 最前列は屋敷の中へと消えてしまっていて……時折、屋敷のほうから悔しそうな顔をして戻ってくる女性の姿が見える。
 中には涙を流している者も。
 列を抜けることも出来ずに、戸惑いながらも少女は徐々に屋敷の方へと進んで行った。
 そろそろ最前列に達しようとした時、たまたま通り縋った衛兵が少女のほうに視線を向かわせた。
「ふぅん……」
 嫌らしい声を吐きながら、衛兵はこちらをまじまじと見ている。
 まるで品定めをされているようで、少女は思わず目を背けたくなった。
「……この中では、マシな方だな。顔についてる黒子の数も全部、一致してやがるようだ」
「黒子……?」
「条件には書いてなかったがな、そう言った細かい特徴も審査の対象なんだよ。良かったな、お前はもしかしたらディーランド家の令嬢になれるかもしれんよ」
 クックッと笑いながら、衛兵はそこから去っていった。
 少女は、愕然とする。
(……ここが、私の家なの?)
 衛兵がいなくなっても、下劣な笑みがまだその場に響いている様に思えた。
 あの人はきっと、ディーランド家に雇われている衛兵。
 そして私がその、ディーランド家の娘であると言うの? 
 ここに来たら、全てが元通りになるかもしれない。
 ”記憶が戻るかもしれない”――抱いていたそんな気持ちは、全て幻想だったのだろうか。
 自分より一つ前に並んでいた女性が屋敷を出て、帰って行こうとする時。
 それを追い越す様にして、少女もまた屋敷から逃げ出していた。

8

 服装も相変わらずなフェレット一行は、やはり相変わらず酒場に溜まって大量の酒を飲んでいた。
「あの子、遅いなあ。帰ってこないなぁ」
 悪酔いしている訳でもないだろうに、飲みながらフェレットはずっとそう連呼していた。
 傍の椅子ではかおるが蛙の様になって潰れている。
「船長、そんなに惜しいと思うんなら様子を見に行ってきたらどうです?」
「馬鹿言えっ、そんな女々しいこと出来るか!」
 船員の声に二倍する大きさで、フェレットは返事をした。
「このまま帰って来なかったとしても、それもあの子の意思だからしょうがないよ。ただ、どうなったのか気になってるだけさ」
「また、強がっちゃって」
「強がってなんかないって!」
 また、殆ど怒号と言っても良い叫び声。
 船員の大半が酔い潰れている中、アイは自分のペースで順調に樽を空けていっていた。
「やれやれ。この飲みっぷりはここ最近の間でも最こ……いや、最悪ね。明日以降が恐ろしいわ」
 言葉とは裏腹に、口調に深刻そうな様子はない。
 酒場にいる客がフェレット達だけになってから数時間、そろそろ日が変わろうかと言う所で、ゆっくりと入り口の扉が開かれた。
 姿を現したのは、フェレットが待ち焦がれていた少女。
 しかし、肝心のフェレットは既に瞳が半分閉じかかっている。
 少女は姿を現すと、ゆっくりとフェレット達の方に近づいていき、そして椅子へと座った。
「おかえり。どうだった?」
 最初に声を掛けたのはアイだった。
 相変わらず正常な神経を保っていられた彼女だけは、少女の何処と無く虚ろな視線に気付いていたのだ。
「私、じゃなかったみたいです。貴族の娘ですもの、私なんかよりももっと品があって、素敵な方だったんだと思います」
「そう……」
 言葉の内容ほど、悲しんでいる様子はないな。
 アイはそう感じ取った。
「それで良かったんだと思います。私……何も思い出せないですけど、でも、貴族なんて柄じゃないと思ったんです。あの綺麗な建物に囲まれた場所にいるより、皆さんの船の上のほうがよっぽど心地よくて、楽しかったですから」
 少女はもう”貴族のふり”をしてはいなかった。
 体に纏っているのは、フアナに借りた質素な格好だ。
 ドレスを丁寧に畳んでテーブルの上に置くと、椅子から立ち上がった。
「何処へ行くの?」
「行く当ては無いですけど……その服の代金も返さないといけないし。少しでも、使わせて頂いたから……」
 少女はまた、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございました。今まで」
 その丁寧な言葉に、誰もが何も返さない。言葉に迷っていたのだ。
「これからはこの町で何とかやってこうと思います。助けていただいて、本当に感謝してます」
 最後にぺこりとお辞儀をして、少女はそのまま酒場を去ろうとする。
 ――しかし、そうはさせてもらえなかった。
「ひゃあっ!?」
 右足を何かに引っ張られて、少女は思いっきりすっ転んだ。
 なんとか顔面をぶつけずにすんだものの、肩を強打して思わず涙ぐむ。
「何……」
 何処に足を引っ掛けたのかと振り返ると――少女の足を掴んでいたのは、なんとかおるであった。
(かおるさん……意識してるんだか、してないんだか)
 アイは思わず硬直してしまい、少女に声を掛ける事すら忘れていた。
 かおる本人は眠っていて、完全に意識は無い様子なのだが……。
「……かおるさんの、言う通りだ」
 テーブルに突っ伏していた、フェレットの声。
 何も言っていないけど、とアイは冷静に思った。
「船の上のが心地よかったんだろ? じゃあ、わざわざ僕達と別れる必要なんかない」
「でも……」
「身元さえ判らない人間が一人で暮らしてけるほど、セビリアは簡単な町じゃないよ。何処に悪い奴がいるかわからないし、変てこな貴族もたくさんいそうだし……」
 そこまで言った所で、フェレットはいきなり首を大きく横に振った。
「いやいや、そんなことが言いたいんじゃない! ――つまり」
 酔いに任せて吐かれていた言葉が、少しだけ優しくなった。
 立ち尽くしている少女の顔が、熱気に当てられたようになる。
「一緒に行こう。航海の楽しさは僕が保証する」
 フェレットはそれだけ言い、その瞳の光は少女を頷かせた。
 それ以上言葉は不要で、少女の瞳からはまた涙が流れた。
 様々な感情を宿したそれは、暫くの間溢れることをやめようとはしなかった。

9

 二日後の朝――出発の時を向かえて。
 フェレットらは再び、フォスベリーの船上にいた。
「あの……フェレットさん、これはどうすれば?」
 記憶は戻っていないし、今の所はそれがどうにかなる当てもない。
 けれど、今はそれを重荷に感じる余裕などないのだった。
「そこの奥に頼むよ。ただでさえ広くない船倉なんだ、ちゃんと整理しないと入り切らないから気をつけてくれよ……さあ、もっと急いで!」
「はい!」
 フェレットに急かされながら、少女は自身と同じほどの背丈をした荷物を運び込んでいた。
「もう君はれっきとした船員の一人なんだからな。特別扱いはしないよ」
「はい。その方が私も嬉しいです」
「……なら良いけど」
 どちらかと言うと、無理をしているのはむしろフェレットの方だったりする。
 変に特別扱いをされても困るであろうことはわかっているから、敢えて様々な作業を手伝ってもらっているのだが、こんな少女に重い物を運ばせてしまっても良いのだろうか。
 ……アイさんにならともかくとして。いや、アイさんにでも駄目か。
 船員の数自体は元々足りているので、わざわざ手伝ってもらう必要はあまり無いのだし……。
 思考は段々とこんがらがって脱線していった。
 考えてもどうにもならなさそうだったので、とりあえずは今まで出した指示のままで放って置くことにする。
「この船は何処に向かうんですか?」
 いきなり訊ねられて、フェレットはどきりとした。
「まずはセウタに行って、フアナおばさんを降ろさないとね。その後はどうするかな……」
「ま、まだ決めてないんですか?」
「船を走らせてれば、目的なんて後から付いてくるもんさ」
 言ってみて、巧い言い訳をしたなとフェレットは自分で思った。
 風の吹くまま、気の向くまま。航海にはそんな言葉が何よりも似合う。
「そうそう、それよりさ」
 少女が荷物を運び終えたのを見て、フェレットはこほんと咳払いをした。
 緊張を解きほぐそうと、大きく呼吸を繰り返す。
「君は……リィは、寝室はそっちの奥の部屋な」
「リィ?」
「うん……君の名前」
 フェレットはおずおずと言った。
 どのように説明しようか困っていると、そこにタイミング良くかおるとフアナがやって来る。
「ヨー、メーン。元気かね」
「え、ええ……?」
 かおるの発した奇天烈な声に、少女はまだ返す言葉を知らない。
 そんなことより……と、少女は再びフェレットの方に向き直る。
 でも、彼は口を開かない。代わりに背後のほうから、言葉は届いてきた。
「リィってのはね……あたしが昔流産した娘に、つけようと思ってた名前なんだよ。生きてたら丁度、あんたくらいの年だった」
 そのフアナの声は、瞳は優しかった。
 この人が本当の親だったら良いのに。そう、思わせるほどに。
「死んだ子供の名なんて、縁起悪いかい?」
「とんでもない! 嬉しいです!」
 本当に幸せそうな声を受けて、フアナもまた柔らかな笑みを浮かべる。
「リィ……か。珍しいけど、良い名前だよな」
「リか」
 フェレットとかおるも、晴れやかに笑っている。
 フォスベリーの船員達もだ。積み込み作業を行いながら、何時になく和やかな空気が船上を包んでいた。
「あっ……あの!」
 リィは、何かを思いついたように声を上げた。
「その、おばさんのお子様は、もし生きてらしたらお幾つなんでしょうか?」
「ん……今年で十七になるのかな」
「それじゃぁ私も十七歳って事にします。そしたら本当におばさんの子供になれた感じがするから!」
「おやおや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。……リィ、もし帰ってきたくなったらいつでもセウタに来ればいい。こんなむさっ苦しい男どもに囲まれてると、あんたの美貌がどうにかなってしまうかもしれないからねぇ」
「あのね……」
 フェレットの顔に、二つの表情が同居した。
 要するに、その顔は半笑いを浮かべながら引きつっている。
「まぁ、帰る場所があるってのは良いことさ。けど、僕らは冒険者なもんでね。折角見つけた宝物をそう簡単に手放す道理は無いからね」
「海賊も宝が命なもんでね。」
 フェレットとかおるの声に、リィは精一杯頷きを返してみせた。
「本当に楽しみです。良かったら……この命が続く限り、ずっと一緒に旅をさせて頂きたいって思ってます」
「命が続く限りか、それも良いね。だけど」
「えっ?」
 フェレットの声は少しだけ含みを持っていて、リィは不思議そうに首を傾げる。
「そうだな……。常に命を賭して戦わなきゃならない海賊なら、その表現も適当かな。けど、海の上の冒険者としてこの僕に言わせれば、こうだね」
 隣の船から、アイの呼び声が届いてきた。
 こっちの準備は出来たから、そろそろ出航しようと。
 ちょっと待った、これだけは言わせてくれと、フェレットは両手でアイの言葉を制止する。
「この世から”未知”が消えてしまうまで――海が果てるまで、僕らは一緒にいよう」
 その言葉は不思議な響きをしていた。
 けど……心地は悪くない。
 海が果てるまで一緒に、か。
 そうなれば良い、とリィは思った。
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  1. 2005/03/11(金) 12:30:49|
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